ラテン語の-queと-ueについてというのは大分マニアックな話にはなる.
否定文に対して-queで接続された要素にも否定の機能が継続することがあって,そういう場合にこのqueをueに修正しようとする人もいるけれどもハウスマンは『アストロノミカ』1.475の注釈で慎重な態度をとっている.
多くの箇所でこの用法があるため,その全てを写字生の誤りに由来するとはできないという.
que ad negationem continuandam adhibitum hic et passim Bentleius in ue mutauit. exempla particulae sic positae apud Manilium et alios poetas tam sunt frequentia ut omnia scribarum errore orta esse non possint: ergo retinenda sunt omnia, nisi alia accesserit offensio, ut III 15.

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なおそれに続けて,もちろんそれらの箇所が破損している可能性はあると断り,写字生が内容を考えず盲目的にueという文字列をqueに書き換えてしまうことがあるという話をして面白い例を挙げている.
ac tamen ex toto numero nullus usus locus est qui corruptus esse nequeat; nam librarii quam caeco impetu que pro ue substituerint ostendit codex Palatinus in Verg. buc. III 60 ab Ioque principium exhibens.

ウェルギリウス『牧歌』3.60にある「ユッピテルから始めようab Iove principium」という有名な,およそ中身を考えて読んでいると間違えそうもない箇所を(しかもこの場合の-ueはIuppiterの奪格をなす一部で接続詞ではない)Ioqueという無意味な文字列に書き換えてしまっているという.

実際のVaticanus Palatinus lat. 1631( digi.vatlib.it/mss/detail/Pal. )の画像を見てみる.上から3行目が問題の箇所.ただこのキャピタル書体はIとLがとてもよく似ているのでややこしい(上の行のALTERNIS, 下の行のILLEと比べてみると微妙さがわかる).一応Qは消して修正しようとしたように見える.

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Ariadna

古典という迷宮の誰が辿るとも知れぬ糸
Niceratus Kiotensisが学術,とくに西洋古典文献学関係のメモとか書誌情報とかを細々と記録したりするためのおひとり様インスタンスです……が,卒鳥への動きに伴いもっと自由な運用になってきています.このインスタンスについてもっと詳しく.