イタリアの小説家アレッサンドロ・マンゾーニ(1785-1873)の『婚約者』(I promessi sposi, 現行の邦題は『いいなづけ』)決定版には,『汚名柱の記』(Storia della colonna infame)という作品が付加されている.
これはペストの流行する1630年のミラノで,毒物を使って疫病を流行させた「ペスト塗り」の嫌疑をかけられ無実の人々が処刑された事件を,当時の裁判記録を駆使しながら描いた歴史作品.方言が交じった一筋縄でいかないイタリア語の会話文や引用される当時のラテン語資料などなかなかの難物なのだけれども,自白の強要と冤罪という(残念ながら)今なおアクチュアルな主題を扱っていておそらく多くの人の関心を集めうると思われるので翻訳が出てほしいところ(最近刊行された霜田洋祐『歴史小説のレトリック
マンゾーニの〈語り〉』(https://gnosia.info/@ncrt035/99799486934744098 )に収められている記事と自分自身で読んだことのある範囲での感想に基づきます).